DeepSeekショックとは?低コスト×オープンソースが変えるAIの常識
2025年1月に中国・DeepSeek社が発表した「DeepSeek-R1」の公開直後、半導体企業の株が急落する現象が起きました。
この現状は「Deepseekショック」と呼ばれAI関連企業だけでなく、さまざまな分野に影響を与えています。
本記事では、この「DeepSeekショック」がどのように業界の勢力図を塗り替え、今後のAI開発や政策、そして世界経済に影響を及ぼすのかを解説します。
AI競争が新たな段階へ突入しつつある今、低コストかつオープンソースを軸にしたDeepseek社の取り組みやその影響をぜひ押さえておきましょう。

AI導入.comを提供する株式会社FirstShift 代表取締役。トロント大学コンピューターサイエンス学科卒業。株式会社ANIFTYを創業後、世界初のブロックチェーンサービスを開発し、東証プライム上場企業に売却。その後、マッキンゼー・アンド・カンパニーにコンサルタントとして入社。マッキンゼー日本オフィス初の生成AIプロジェクトに従事後、株式会社FirstShiftを創業。
DeepSeekショックとは
(出典 Deepseek)
DeepSeekショックは、2025年1月に中国のDeepSeek社が公表した大規模言語モデル**「DeepSeek-R1」の公開直後に半導体企業NVIDIA株を含むAI関連銘柄が急落**し、約6,000億ドルの時価総額が失われた現象のことです。
従来は「NVIDIAの最先端GPUなしには高性能モデルを作れない」と考えられていたところ、DeepSeekが限られた資金と独自手法で同等以上のモデルを作った可能性が示唆され、投資家の不安が高まったと分析されています。
Deepseekが低コストで開発できた理由
Deepseekが低コストで開発できた理由として、「米国によるAIチップ規制」が挙げられます。
米国は中国に対し高度なAIチップの輸出規制を敷きましたが、その制約下においてもDeepseekは性能を最適化する手法を開発し、高コストが当然とされてきたAI開発の常識が大きく覆されました。
業界では、この輸出規制こそが逆に中国国内の企業を「高性能のAIチップを使わない別の方法」を模索させる原動力になった、と見る声が高まっています。
実際に、従来は数億ドルの最先端の計算資源が必要でしたが、Deepseekは約560万ドルの低予算での高性能AIの開発に成功しています。
Deepseekが影響を与えた業界
ここではDeepSeekショックが波及した業界を取り上げ、それぞれが直面した変化を説明します。
AI産業に与えた影響
AI産業ではOpenAIやGoogle、Metaなどは、クローズドな大量投資モデルで優位に立ってきました。
しかし、オープンソース・低コストを前面に掲げるDeepSeek社が世界トップレベルの性能を実現したことで、新興企業でもDeepseekが公開したモデルを利用して最新鋭の大規模言語モデルを作れる土壌ができました。
オープンソースと連携すれば多くの研究者やエンジニアが改良に参加できるため、今後AI産業ではオープンとクローズドの競争がさらに激しくなるとみられます。
半導体業界に与えた影響
DeepSeekショック直後には、高性能GPUを提供するNVIDIA株が一時17%も急落しました。
これまでは高性能GPUを大量に供給することが大きな利益源となっていた半導体業界が、制限版GPUを使った最適化手法によって既存のビジネスモデルが崩れかねないと投資家が懸念したためです。
中国テック産業に与えた影響
中国テック産業ではDeepSeekをきっかけに「第二のDeepSeek」を目指すAIスタートアップが続出し、投資熱が急上昇しています。
習近平主席が民間ハイテク企業を激励する会合を開催したこともあり、中国ベンチャー投資は大きく盛り上がりました。
かつては模倣が多いと指摘された中国スタートアップに対して、今は破壊的イノベーションを生み出せるとの見方が強まっています。
安全保障・政策分野に与えた影響
米国政府では安全保障・政策に関して「DeepSeek-R1」における知的財産侵害やデータ不正流用の可能性を警戒し、ホワイトハウスや国家安全保障会議(NSC)が調査に乗り出しました。
輸出規制を強めてもなお、新手法で性能向上が可能ならば、現行の規制が今後どうあるべきかという議論が浮上しています。
中国側も、技術競争力を高めるため一層AI開発に注力する動きを見せています。
主要関係者のDeepseekに対する見解
(出典 AP/アフロ)
ここでは米国政界やOpenAI関係者、研究者や中国投資家などのDeepseekへの見解を紹介します。
米国政界の見解
ドナルド・トランプ米大統領は「安いことは良いことだ」としながらも、**「米国の産業が競争で勝つにはもっとAI開発に集中すべきだ」**と発言しました。
かつては米国がソ連のスプートニク打ち上げに衝撃を受けたように、「AI版スプートニク・ショック」とも呼ばれる現状に危機感をあらわにしています。
OpenAI関係者の見解
OpenAIのチーフリサーチオフィサーであるマーク・チェン氏は、DeepSeekが公開した論文を見て「我々のトップモデル到達時の中核アイデアを独自に再発見している」と評価しました。
また、サム・アルトマンCEOはリリース予定を繰り上げ、政府機関向けChatGPTの新バージョンを急遽公開するなど、対抗策を打ち出しています。
AI研究者・技術者の見解
AI研究者のアンドレイ・カルパシー氏は「これほどのLLMには1億6000万個のAIチップが必要というのが定説だった」と驚きを示しています。
Metaのエンジニアも「DeepSeek-V3やR1が自社の次世代モデル開発計画に動揺をもたらした」と社内投稿し、大企業の投資戦略を見直させるほどのインパクトがあるとされています。
中国業界・投資家の見解
ニューアクセスキャピタルのアンドリュー・チェン(錢安社)氏は「破壊的な技術を持つ中国のイノベーターが世界に通用する段階に入った」と評価しています。
中国国内でもDeepSeekのような革新がさらに増えるかどうかを注視する声が上がっていますが、一方で学習データの出どころなどを疑問視する意見も存在します。
AI業界の今後の展望
AI業界ではオープンソース戦略、政策や安全保障など、複数の分野にわたる変化が予想されます。
ここでは将来に向けた主要なトピックを挙げ、それぞれの動向を整理します。
オープンソース戦略の拡大
DeepSeek-R1のMITライセンス公開により、誰もがコードや学習済み重みを入手してAIモデルの改良を試せる環境が整いました。
MetaもLlama2をオープンソース化するなど、クローズドモデルだけでは差別化しにくい時代に入っています。
研究者やエンジニアが協力してモデルを進化させる動きが増えれば、AIの発展スピードはさらに高まると予想されます。
米国の政策見直し
米国は対中輸出規制を強めていますが、制限されたチップでも高性能を引き出せる手法が生まれています。
米国は今回の「Deepseekショック」を受けて自国のAI開発を加速するための投資(国家プロジェクトの立ち上げや研究資金の増額など)や、輸出規制の見直しを検討する可能性があります。
安全性・信頼性への取り組み
一部では、DeepSeek社がOpenAIの大量データを不正取得しているという疑惑が上がっています。
現在OpenAIは調査中とのことで、結果によっては法的措置につながる可能性があります**。**
また、MicrosoftはDeepSeek-R1を自社クラウドサービスAzureで提供するにあたり専門チームによる安全性評価を導入しています。
オープンソース化が進むほど、学習データの出どころや知的財産権の問題は避けられません。
今後は国際的なルールやガイドラインの策定、第三者評価機関の設立が重要になると考えられます。
まとめ
DeepSeekショックは、低コスト・オープンソース・中国発という要素が重なり、生成AIや半導体、クラウドなど多岐にわたる分野に変革をもたらしています。
トランプ大統領が「AI版スプートニク・ショック」と例えたように、1957年にソ連の人工衛星がもたらした衝撃と同様、世界各国の技術競争を加速させる現象となっています。
今はまだこの競争の始まりにすぎませんが、低コストで高性能なモデルを生み出せる手法やオープンソースの力が証明されたことで、AI時代における新しい地平が切り拓かれようとしています。
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