DeepSeek(ディープシーク)とは?中国発オープンソースAIを徹底解説

かつてはOpenAIなどの大手ばかり注目されていた生成AI分野ですが、現在では中国製生成AIの「DeepSeek」の登場によって競争環境が大きく変化しています。

オープンソース戦略や低コスト開発により、限られたリソースでも高度な推論を可能にするこの企業は、生成AI業界の勢力図を大きく変える可能性があると言われています。

本記事では、話題を集めるAI企業DeepSeekと、その最新モデルであるDeepSeek-R1に焦点を当てて解説します。大規模言語モデルの技術的特徴や導入方法から、世界中で議論を呼んでいる規制問題や市場への影響まで、DeepSeekの核心的な魅力と今後の展望をさまざまな視点でご紹介します。

仲 思成
著者: 仲 思成

AI導入.comを提供する株式会社FirstShift 代表取締役。トロント大学コンピューターサイエンス学科卒業。株式会社ANIFTYを創業後、世界初のブロックチェーンサービスを開発し、東証プライム上場企業に売却。その後、マッキンゼー・アンド・カンパニーにコンサルタントとして入社。マッキンゼー日本オフィス初の生成AIプロジェクトに従事後、株式会社FirstShiftを創業。

DeepSeekとは

(出典 Deepseek)

DeepSeekとは2023年に中国で創業されたAIスタートアップで、驚異的な性能を保つ大規模言語モデルを開発しています。

創業者の梁文峰(Liang Wenfeng)氏はヘッジファンド「High-Flyer Capital Management」の共同創業者で、そこで得た資金をもとに汎用人工知能(AGI)の実現を目指してDeepSeekを立ち上げました。

設立当初はAGI研究を重視する小規模チームでしたが、2025年1月に公開された最新モデル**「DeepSeek-R1」はOpenAI社の最新モデル「ChatGPT o1」に匹敵する性能を実現**し、世界的な注目が集まりました。

DeepSeekが注目される理由

DeepSeekが注目される理由は、そのコスト面です。

これまでの生成AIモデルの学習では、膨大なリソース・資金が投下されており、その規模は数十億円以上であることが一般的でした。

しかし、DeepSeekでは、効率的な学習手法や最適なハードウェアの活用により約2カ月で約550万ドル(約8億円)という他社を寄せ付けない圧倒的な低コストでの開発を実現させました。

Deepseekが提供するAI製品・サービス

ここではDeepSeekが提供するAI製品やサービスについて紹介します。

大規模言語モデル(LLM)

DeepSeekは主に3つの大規模言語モデルを公開しています。

2023年11月公開の「DeepSeek Coder」はコード生成に強みがあるモデルとして公開しています。続く「DeepSeek-V3」は汎用型のモデルとして進化し、2025年1月に最新モデルDeepSeek-R1を発表しました。

オープンソースモデルと商用API

DeepSeekはモデルをオープンソースで公開し、開発者コミュニティの参与を促しています。

一方で企業向けにはOpenAI互換のAPIを用意しており、入力100万トークン0.55ドル・出力100万トークン2.19ドルと、非常に低価格でサービスを提供しています。

これによりビジネス用途でも導入しやすくなり、多くの企業がDeepSeekモデルを組み込んだアプリケーションを開発できる体制が整いました。

Azureとの連携

2025年1月下旬にはMicrosoft Azure AI FoundryのモデルカタログにDeepSeek-R1が追加されました。

これによってAzureでのデプロイをワンクリックで行えるため、クラウド経由のスケーラビリティとセキュリティ機能をあわせて活用することができます。

最新モデルDeepseek-R1の特徴

ここではDeepSeek-R1の技術的特徴である大規模パラメーターやMoE、強化学習について解説します。

大規模パラメータとMoE

DeepSeek-R1はAIモデルの性能に直結するパラメータを約6,710億備え、約14.8兆トークンもの膨大なデータを学習しています。

そのため通常であれば大規模な計算資源が必要になりますが、Deepseek-R1では最適化手法の進展によって、前モデルV3に比べて少ない資源でより高度な推論能力を実現しています。

また、前モデルDeepSeek-V3ではすでにMoE(Mixture-of-Experts)という複数の専門家モデルを組み合わせる方式を採用していましたが、R1でも同じく採用されています。

強化学習GRPOの導入

R1では**GRPO(Group Relative Policy Optimization)**という独自の強化学習手法を使っています。

従来のRLHFでは報酬モデルの設計が複雑でしたが、GRPOでは出力グループの相対評価に統計的アプローチを導入し、長い思考連鎖(CoT)や自己検証をスムーズに実行できるようになっています。

これによって数学問題やプログラミングタスクでの正答率が飛躍的に向上し、R1は短期間で高い評価を獲得するに至りました。

Deepseek-R1の性能

性能が高いと言われているDeepSeekですが、実際どれほどの精度なのでしょうか。

ここでは、生成AI性能のベンチマークとなる代表的なコンテストと、それぞれでのDeepseek-RIのスコアを紹介します。

モデル評価の主なベンチマーク

ベンチマークの具体的な数値を見る前に、代表的なベンチマークの種類とその内容を4つ紹介します。

AIME 2024

AIMEはアメリカの高校生を対象とした難関数学コンテストです​。全米トップクラスの高校生が挑戦する選抜試験で、非常にチャレンジングな数学の問題が出題されます。

MATH-500

MATH-500は数学の競技試験の問題を集めたベンチマークです。アメリカや国際的な数学コンテスト (AMCやAIMEなど) から厳選された、難易度の高い数学問題が12,500問含まれています​。

LiveCodeBench

LiveCodeBenchはコード生成の精度をテストするための広範な問題を含んでおり、競技プログラミングに近い難易度の高い問題で構成されています。

CodeForces

CodeForcesもコードの性能を試すためのベンチマークで、競技プログラミングの問題が採用されています。

ベンチマークごとのDeepSeek-R1の性能評価

下の表ではそれぞれのベンチマークについて、Deepsekk-R1のスコアをまとめています。

ベンチマーク DeepSeek-R1のスコア 補足
AIME 2024 約79.8% OpenAI-o1と同等
MATH-500 約97.3% OpenAI-o1を上回る
LiveCodeBench 約65.9% OpenAI-o1を上回る
Codeforces Elo Rating: 2029 OpenAI-o1と同等

上記の通り、DeepSeek-R1は高難度の数学やプログラミング問題でOpenAIの最新モデル(OpenAI-o1)と肩を並べ、項目によっては上回っています。

Deepseekの利用方法

OpenAIの立ち位置を揺るがすレベルと言われているDeepSeekですが、使用法は簡単で、誰でも気軽に使うことができます。

ここでは主にDeepseekを利用する様々な方法について紹介します。

WebブラウザからDeepseekを利用する方法

最も簡単なWebブラウザでDeepseekを利用する方法を説明します。

下記の手順をぜひ参考にしてみてください。

手順1:ユーザー登録

Deepseek公式サイトよりメールアドレス・電話番号・Googleアカウントのいずれかを用いて登録することができます。

手順2:ログイン後チャットを開始

Webブラウザ以外の利用方法と特徴

DeepseekはWebブラウザ以外にも利用する方法がいくつかあります。

下の表ではそれぞれの利用形態とその特徴についてまとめています。

利用形態 概要 メリット
Webブラウザ chat.deepseek.com で無料利用 登録後すぐに試せてシンプル
API OpenAI互換API (platform.deepseek.com) 自社アプリやサービスへ統合しやすい
ローカル環境 モデルをHugging Faceからダウンロード オフライン運用や独自カスタマイズが可能
スマホアプリ iOS/Android対応 多言語対応で手軽に利用できる
Azureでの利用 Azure AI Foundryからワンクリックデプロイ スケーラビリティとAzureコンテンツフィルターを活用可能

下の記事ではそれぞれの利用方法について詳しく解説しているので、ぜひ併せてご覧ください。

Deepseekが与える市場インパクト

ここではDeepSeekが市場に与えた影響を取り上げます。

株価急落を招いた「DeepSeekショック」など、金融市場や競合企業への波及効果を解説します。

DeepSeekショック

Deepseekショックとは、DeepSeek-R1の公開直後に半導体企業NVIDIA株を含むAI関連銘柄が急落し、約6,000億ドルの時価総額が失われた現象のことです。

従来は「NVIDIAの最先端GPUなしには高性能モデルを作れない」と考えられていたところ、DeepSeekが限られた資金と独自手法で同等以上のモデルを作った可能性が示唆され、投資家の不安が高まったと分析されています。

競合企業への影響

Deepseekは少ないリソースで高性能なAIモデルを開発し、そのモデルをオープンソースモデルとして一般に公開しました。

そのため、OpenAIやAnthropicのように、大規模資金クローズドモデルで先行してきた競合企業にとって、DeepSeekの台頭は新たな脅威となっています。

もし他社が同様の手法を取り入れれば、今後競争がさらに激しくなる可能性が高いといえます。

DeepSeekと競合モデルの比較

DeepSeekと主要な競合企業では、その性能や評価はどのように異なるのでしょうか。

ここでは一番の競合となるOpenAIとの比較、さらに中国国内他社のLLMモデルとの比較をご紹介します。

OpenAIとの比較

OpenAIはMicrosoftによる巨額投資を背景とし、GPT-4やOpenAI-o1などクローズドなモデルを開発してきました。

一方、DeepSeekはオープンソースを軸にし、強化学習の独自手法で推論力を引き上げるアプローチをとっています。

アプローチは両者異なるものの、数学やプログラミングにおいて同等の性能を記録している点は注目すべきポイントです。

中国国内のLLMモデルとの比較

BaiduやAlibabaをはじめとする中国の大手IT企業も生成AIに注力していますが、DeepSeek-R1ほどの成果はまだ出せていないと見る声が多いです。

中国政府もDeepSeekに注目しており、国家レベルでの支援や規制強化が進む可能性があります。

Deepseekの資金状況

ここではDeepSeekの資金面や投資状況について、大きく2点を解説します。

DeepSeekの主な開発資金源

DeepSeekは創業者の梁文峰氏が保有するHigh-Flyer Capital Managementからの自己資金を主なリソース源としており、外部投資家や大手テック企業からの大型資金調達は実施していません。

このスタイルにより、開発方針を柔軟に決定できるとみられています。

DeepSeekの主な大規模投資先

DeepSeekは主にGPUリソースの確保に投資しており、2020~21年の段階で高性能なNVIDIA製A100を多数確保し、大規模学習が可能な環境を構築してきました。

そのため今回のDeepseek-R1の開発には表向きは「H800やH20といった抑制版」を使っているとされていますが、実は最先端GPUを極秘裏に保有しているのではないかといううわさも絶えません。

大規模データセンターの所有が、他のスタートアップを圧倒する高速な開発を支える要因になっています。

Deepseekの安全性とリスク

ここではDeepSeekのデータ保管や検閲、コンテンツフィルター、サイバー攻撃など、安全性にかかわるリスクを整理します。

サイバー攻撃

2025年1月末、Azureモデルカタログへの搭載が完了し、利用者数が急増しました。

この時期にサイバー攻撃を受け、新規ユーザー登録が一時停止に追い込まれる事態も発生しましたが、対策を講じて短期間で復旧を果たしています。

今ではクラウド環境での導入がさらに広がり、ユーザー側にとって使いやすい状況が整いつつあります。

データ保管と検閲

DeepSeekは中国国内のサーバー上でデータを管理しているため、個人情報保護法など各国の法律との整合性が懸念されます。

政府がセンシティブとする政治的話題には、回答が制限される検閲機能が組み込まれているとの指摘もあり、利用者がこの点をどう評価するかが課題です。

コンテンツフィルターの現状

一部の調査では、不適切な内容を求める悪意あるプロンプトを通してしまう例が報告されています。

OpenAIやAnthropicが導入している厳格なフィルター機能に比べると弱い部分があるため、DeepSeekがグローバル展開を進めるうえでは安全対策の強化が必要といえます。

まとめ

(出典 Deepseek)

ここまでDeepSeekの企業背景やR1の性能、導入方法、資金調達、安全性やリスクに至るまで多角的に紹介しました。

現在のDeepSeekは、以前の「限られたリソースでの開発」から脱却し、世界トップクラスのAIモデルを低コストで生み出す企業へと進化しています。

オープンソース方針や独自の強化学習手法によって、OpenAIなど大手とも十分に競合できるポテンシャルを持っています。

一方で、地政学リスクや安全性への疑問もあり、今後は各国規制との折り合いが不可欠です。

Deepseekがこれからどのような戦略で最新のモデルを開発していくのか、今後も目が離せません。

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