マルチモーダルAIでできることとは?画像・音声・テキストの活用例を紹介
画像や音声、テキストなど、異なる種類の情報を一つのAIで扱える「マルチモーダルAI」は、近年注目を集めている分野です。
この記事では、マルチモーダルAIの基本的な仕組みから、シングルモーダルAIとの違い、どんなことができるのか、さらに代表的な生成AIごとの対応モーダリティ、テキスト×画像・音声・動画といった組み合わせによる活用例まで、幅広く紹介していきます。
また、医療や建設業界などでの実際の導入事例や、課題とその対策についても取り上げています。
ぜひ最後までご覧ください。
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AI導入.comを提供する株式会社FirstShift 代表取締役。トロント大学コンピューターサイエンス学科卒業。株式会社ANIFTYを創業後、世界初のブロックチェーンサービスを開発し、東証プライム上場企業に売却。その後、マッキンゼー・アンド・カンパニーにコンサルタントとして入社。マッキンゼー日本オフィス初の生成AIプロジェクトに従事後、株式会社FirstShiftを創業。
マルチモーダルAIとは?
マルチモーダルAIとは、テキスト・画像・音声・動画など複数の異なる情報(モダリティ)を同時に処理し、統合的に理解する人工知能です。
これにより、単一のデータでは把握しきれない複雑な状況の分析や、より人間に近い判断が可能になります。
シングルモーダルAIとの違い
シングルモーダルAIは一種類のデータしか扱えないのに対し、マルチモーダルAIは複数のデータ形式を組み合わせて処理できます。
たとえば、画像だけを認識するAIはシングルモーダル、画像と説明文を同時に理解するAIはマルチモーダルです。
これにより、複雑なタスクへの対応力や応用範囲が格段に広がります。
人間が視覚・聴覚・言語を総合して判断するように、マルチモーダルAIは複合的な理解を実現します。
マルチモーダルAIでできること
マルチモーダルAIは、データを統合的に理解することで、精度の高い処理や人間らしい判断、多機能なスキルの獲得が可能です。
ここでは、代表的な5つの機能について紹介します。
高精度なデータ処理
複数のモダリティを組み合わせることで、単一データだけでは困難だった高精度な処理が可能になります。
たとえば、医療分野では画像診断とテキストの診療記録を統合することで、診断の精度を向上させています。
情報の相互補完により、誤認識や見落としのリスクを軽減できます。
人間に近い判断力
異なる情報を組み合わせて総合的に分析することで、人間に近い文脈理解や直感的な判断が可能になります。
カスタマーサポートでは、顧客の発言内容や音声のトーンを同時に解析し、より自然な応対を実現しています。
AIとの対話の中で違和感のない応答が期待できるようになります。
多様なスキル習得
マルチモーダルAIは、視覚・聴覚・言語などのスキルを横断的に学習し、複雑なタスクをこなせるようになります。
画像と言語の組み合わせによって「画像説明文の生成」や「質問応答」が可能となり、多様なサービスへの応用が進んでいます。
タスクをまたいで活用できる柔軟性が特長です。
スムーズな異常検知
異常を検知する際にも、複数の情報を統合することで検出のスピードと正確性が向上します。
製造現場では、機械のセンサー情報と映像データを組み合わせて、不具合の予兆を察知しています。
リアルタイム性の高い対応が可能です。
行動認識への応用
映像や音声を同時に処理することで、人の動きや感情を読み取る「行動認識」が実現できます。
監視カメラにおいては、動作と発言を総合して異常行動を検出するなど、防犯や安全管理にも応用されています。
非接触で状況を把握できる点も評価されています。
【生成AI別】対応モーダリティ一覧
主要な生成AIが対応しているモダリティ(テキスト・画像・動画・音声)を一覧表で整理します。
マルチモーダルAIを活用する際の参考にしてください。
生成AI | テキスト | 画像 | 動画 | 音声 |
---|---|---|---|---|
ChatGPT | ○ | ○※ | × | ○※ |
Gemini | ○ | ○ | △ | ○ |
Claude | ○ | × | × | × |
DALL·E | × | ○ | × | × |
Whisper | × | × | × | ○ |
Sora | × | ○ | ○ | △ |
※ChatGPTは一部プラグインや有料プランで画像・音声に対応しています。
組み合わせ別・マルチモーダルAI活用例
異なるモダリティを組み合わせることで、AIは多彩な業務に応用できます。
ここでは代表的な組み合わせと具体例を紹介します。
テキスト×画像 の活用例
ECサイトの商品推薦
ユーザーが入力する検索キーワードや閲覧履歴といったテキストデータに加え、過去に閲覧した商品の画像データを組み合わせることで、より精度の高い商品推薦が可能になります。
例えば、特定の色やデザインの衣服を好む傾向があるユーザーには、視覚的特徴を分析した上で、類似した新商品を提案することができます。
医療診断支援
医療現場では、患者の診療記録や問診内容といったテキスト情報と、レントゲンやMRIなどの画像データをAIが同時に解析することで、診断の精度向上が図られています。
例えば、肺の異常陰影を検出する際、画像解析だけでなく、患者の喫煙歴や症状の記録を加味することで、より正確な診断が可能になります。
テキスト×音声 の活用例
音声アシスタントの強化
音声アシスタントは、ユーザーの発話を音声認識技術でテキスト化し、そのテキストを自然言語処理(NLP)によって解析することで、より自然で文脈を理解した応答が可能になります。
例えば、ユーザーが「明日の天気は?」と尋ねた際、単に天気情報を提供するだけでなく、過去の会話履歴や現在地情報を考慮して、よりパーソナライズされた情報を提供することができます。
コールセンターの応対支援
コールセンターでは、顧客との通話内容をリアルタイムでテキスト化し、過去のFAQデータや対応履歴と照合することで、オペレーターに最適な回答候補を即座に提示するシステムが導入されています。
これにより、オペレーターは迅速かつ的確な対応が可能となり、顧客満足度の向上や業務効率の改善が期待されています。
また、通話内容の自動記録や分析により、サービス品質の継続的な向上にも貢献しています。
画像×音声 の活用例
動画字幕の自動生成
動画コンテンツにおいて、映像と音声を同時に解析することで、リアルタイムで正確な字幕を自動生成する技術が活用されています。
この技術は、教育分野やYouTubeなどのオンラインプラットフォームで広く利用されており、聴覚障害者への情報提供や、多言語対応によるグローバルな視聴者へのリーチ拡大に寄与しています。
また、字幕データの蓄積により、コンテンツの検索性向上や再利用の促進も期待されています。
防犯カメラでの異常検知
防犯カメラにおいて、映像と音声データを同時にAIが解析することで、異常な行動や音声を検知し、即時に警報を発するシステムが導入されています。
例えば、深夜の店舗での不審な動きや、破壊音、叫び声などを検出することで、迅速な対応が可能となり、犯罪の未然防止や被害の最小化に貢献しています。
このようなマルチモーダルな監視システムは、公共の安全確保において重要な役割を果たしています。
マルチモーダルAIの活用事例【業界別】
マルチモーダルAIは多くの業界で活用が進んでいます。
ここでは医療・建設を含む5業界の事例を紹介します。
医療業界での活用事例
NTTレゾナント株式会社が提供する「AI suite」は、テキストや画像、映像情報を組み合わせて感情分析を行うマルチモーダルAIです。
この技術は、オンライン会議でのリアルタイム分析や、医療現場での診断支援に活用されています。
患者の音声、画像、診療記録を統合的に解析することで、医師の業務負担軽減や診断精度の向上に貢献しています。
建設業界での活用事例
Fairy Devices株式会社、株式会社ブレインパッド、株式会社BrainPad AAAの3社は、首掛け型ウェアラブルデバイス「THINKLET」と連携する「作業動画解析AIエージェント」を開発しました。
このシステムは、作業員の映像・音声・センサーデータをリアルタイムで解析し、作業手順書や報告書を自動生成します。
これにより、現場作業の効率化と安全性の向上が実現されています。
製造業界での活用事例
株式会社ブレインパッドは、マルチモーダルAIを活用した「汎用土地環境評価システム」を開発し、経済産業省の衛星データ利用事業に採択されました。
このプロジェクトでは、衛星画像と地理データを統合解析し、土地の環境評価を行うことで、製造業の新たな立地選定や環境対策に貢献しています。
小売業界での活用事例
ソフトバンク株式会社は、Google CloudのGeminiとGoogle WorkspaceのAppSheetを活用し、展示会での名刺情報や会話内容を画像・音声データから自動抽出・整理するシステムを構築しました。
これにより、営業活動の効率化と顧客対応の質向上が図られています。
教育業界での活用事例
株式会社リコーは、GENIACプロジェクトの一環として、文章以外の情報も理解できるマルチモーダルLLM(大規模言語モデル)の開発を進めています。
この技術は、教育現場での教材作成や学習支援ツールへの応用が期待されており、個別最適化された学習体験の提供に寄与しています。
マルチモーダルAIの課題と対策
マルチモーダルAIの活用には大きな利点がある一方で、いくつかの課題も存在します。
ここでは代表的な3つの課題とその対策を紹介します。
課題1:データ処理時間の長さ
複数のモダリティを扱うことで処理量が増え、リアルタイム対応が難しくなる場合があります。
対策としては、軽量なモデル設計やクラウド処理の導入が有効です。
課題2:判断根拠の不透明性
AIがどの情報に基づいて判断したかが分かりづらいという課題があります。
これにはExplainable AI(XAI)の導入や、可視化技術を組み合わせることで対応可能です。
課題3:セキュリティ・倫理リスク
個人情報やセンシティブなデータを複数扱うことで、プライバシーや倫理的リスクが高まります。
匿名化処理やデータ利用の透明化を徹底し、セキュリティ体制を強化する必要があります。
まとめ
マルチモーダルAIは、複数の情報を統合的に理解・活用することで、より高度で人間らしい処理を可能にする技術です。
活用が進む一方で、処理負荷や説明性、セキュリティといった課題もあります。
導入には、用途に応じた適切な設計と、リスク対策を並行して進めることが求められます。
これからのAI活用を考えるうえで、マルチモーダル技術の理解は不可欠です。
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